世界を驚愕させたリオネル・メッシの移籍騒動。メッシ側は即時の契約解除を希望しているが、バルセロナ側は違約金7億ユーロー(890億円)の支払いが解約の条件としており、リーガー側もバルセロナ側を支持しており、移籍が実現するのか不透明な状況である。そんな中移籍先の最有力と各種メディアで報じられているのがマンチェスター・シティ。かつての師匠であるグアルディオラが監督をしていることに加え、中東のオイルマネーを背景にした圧倒的な資金力で、おおよそ唯一メッシを獲得可能なクラブにも思える。
そんな中、イギリスメディアはメッシのマンチェスター・シティへの移籍を冷めた目で見つめているようである。明確に獲得すべきでないと報じるメディアも多い。なぜだろうか?
■年齢の問題
メッシは現在34歳。21世紀で最も完成度の高い選手であることは疑いようのない事実であるが、17歳でデビューして以来、神業のようなプレイを人生の半分以上続けてきた彼の現在を見たときに、残念ながら(素晴らしい選手であることに変わりはないが)そのピークは過ぎてしまったと言わざる得ない。その上、数多くの外国人プレイヤーを悩ませてきたプレミアーリーグのフィジカルの強さとスピードが待ち受けていることを考えると、メッシも人の子、5年前だったらいざ知らず、現在の年齢を考えると厳しいと言わざる得ない。
■周囲との関係性
13歳にからバルサのアカデミーのLa Masiaに所属をし、17歳でのデビュー後、ほとんど常にバルサのサッカーは彼を中心に回ってきたが新しい環境になった時、チームとしてもメッシとしても環境に適合するのに時間がかかるだろう。
デブライネがどう思うのか?せっかく昨シーズン、出場機会が増えてきたフォーデンのレギュラーへの道はふさがれてしまわないのか?(とフォーデンが思わないのか?)「特別扱いはメッシ自身が望んだことではない」という声もあるが、常にチームの中心であり続けたカリスマが新しいチームに移籍してきたとき、ドレッシングルームや給与のバランスが大幅に崩れる可能性もある。そうなったとき何が起こるのだろうか?そのリスクが今必要なのだろうか?
■コスト面の不合理性
メッシの給与は年総額1億ユーロ(約126億円)とも言われている。ユニフォーム等のマーチャンダイズではとてもじゃないが元は取れないだろう。
唯一可能性があるとしたら、コスト度外視の客寄せとして使う手が考えられる。特にオーナーのアブダビ(UAE)のイメージアップ(いわゆるSportswashing)に使うことは考えられる。いずれにせよ、ビジネスとしての妥当性は欠いているといわざる得ない。
また、仮にそのような使い方をするにしても、UEFAのFinancial Fair Playの問題も残ってる。
■補強の必要性
シティといえども資金には限りがある。これほどの予算を前線の選手につぎ込めば、その他のところに影響が出てくる。現在のシティをみれば、前線の選手が不足しているとは言えないし、その一方でディフェンスに課題があることも明確である。特にヨーロッパを狙うのであればなおさらである。現時点のシティにとって純粋にサッカー視点で考えたとき、どこに投資すべきかは明らかだろう。
もちろん、ニュートラルなサッカーファンとしてみたときに、メッシがプレミアリーグでプレイすることに心躍らない人はいないだろう。資金面やグアルディオラとの関係など考えてもシティは現時点で最も妥当な選択肢でもある。しかしながら、グアルディオラはメッシを入れたとき、彼がアグエロにさせたような激しい前線からのプレスをメッシにさせることができるのだろうか?アグエロは前線から守備の弱さで一時期戦力外になっていたとおもわれた時期もあった。そのようなことをメッシにさせることができるのか?またそうすべきなのか?戦術の変更をすることになるのか?これら含めて考えるとメッシの獲得は正しい選択にはなりえないのではとイギリスの各紙は報じている。