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19-20年のプレミアリーグで、1月現在、なかなか調子が上がらないマンチェスターユナイテッド。18-19年シーズンの途中での監督就任当初はよいパフォーマンスを見せて、結果シーズン途中で暫定監督から正式な監督へ昇格したスールシャールに対する風当りも強くなっている状況だが、イギリスのGuardian紙に記事を書いたJonathan Wilsonは、「スールシャールは監督にふさわしくない」とバッサリと切り捨てている。

1927年代にHerbert Bamlettという人がUnitedの監督になった。この人は変わった経歴をもっており、1900年代から1910年代にかけて、審判として活躍しており、1909年には、FA Cup quarter-finalでUnited対Burnleyの笛を吹いた過去をもっていた。

この試合でちょっとしたハプニングがあり、ピッチコンディションの不良のため試合が途中で中止になっている。その時のスコアは、Burnleyが1、Unitedが0であった。

その後の再試合で、UnitedはBurnleyを3-2で破り、最終的に初めてのFA Cup優勝を手にすることになった。

不運なことに、Bamlettの監督就任後、クラブのオーナーや有力者の死が相次ぎ、クラブの予算が限られることになり、結果十分な選手の補強や入れ替えができず、Unitedは苦戦することになり、最終的に1931年に降格の憂き目をみることになった。当然、Bamletの契約が更新されることもなかった。「FA Cup初優勝に貢献した人」というある種の感傷で監督を採用したみじめな結末であった。

この状況は、現在の状況と似ていないだろうか。スールシャールが19年3月に暫定監督から正式な監督に就任して以降の成績をみると、勝率でいうと、36.67%であり、これはBamlet以降歴代監督の中で最低の成績である。

若手の育成であったり、チーム作りへの忍耐が必要という声も聞こえ、それももっともであるが、今から数年後に「スールシャールを監督にするのは間違っていた」と気づいたらどうするのだろうか?チームのポテンシャルが生かされなかったらどうなるのだろうか?何よりも、スールシャールを尊重するあまりに、その間にMauricio Pochetinoのような実績のある監督を採用する機会を逃したらどうするのだろうか?

確かにクラブの価値観を理解しそれを体現してきたレジェンドがその再興をになうことに心躍らないファンはいないだろう。だからこそ、今フランク・ランパードはチェルシーで多くの支持を得ており、バルセロナはシャビを監督にしようとしたし、サンダーランドのファンはケビン・フィリップスと契約しようとしたし、エド・ウッドワードが(数少ないよかった決定の中でも)行った最良の決断が、ジョゼ・モウリーニョを解任し、スールシャールを暫定監督に据えたことであったわけだ。