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2019年11月、トッテナム・ホットスパー(Tottenam Hotspur)の監督であるマウリシオ・ポチェティーノ(Mauricio Pochettino)が解任されました。11月時点でリーグ14位で、期待を大幅に下回るパフォーマンスで、トッテナムにとってレジェンとともいえる実績を残したポチェティーノでも現代サッカーの残酷な現実から逃れることができませんでした、

イギリスの高級紙 Guardian の記事の中で、サッカーライターのJonathan Wilsonは、ポチェティーノの解任は昔から大きく変わった現代サッカーのある特徴とポチェティーノ自身がもっていたサッカー哲学の帰結であると説いています。

50年前、チームのパフォーマンスが低下した場合、当時のリバプール(Liverpool)の監督であったビル・シャンクリー(Bill Shankly)がやったように、監督は選手を大幅に入れ替えて、その刷新を図ることができました。(その当時シャンクリーは半分近くの選手を入れ替えたようです)結果、シャンクリーの場合は、立て直しに成功し、3年後にはリーグとUEFA Cupを獲得し、その一年後にはFA Cupも獲得しています。

当時はチームの成績が悪化しても、監督に十分な立て直しの時間が与えられていたわけです。

一方、現代ではそのような猶予は監督には与えられません。すべてがお金で判断されがちな昨今、高騰している選手のサラリーを考慮すると、選手の半分を入れ替えるより、監督を入れ替えるほうが単純に安上がりなわけです。

サッカーにはサイクルがあると多くの監督がいっています。3年経つと、選手にも監督の戦術や特性などへのある種の倦怠を感じるようになるようです。そんな特にシャンクリーや最近までそれが可能であったファーガソンのように、監督によるチーム内の変革が必要なわけですが、ポチェティーノにはチームの財政的な問題があり、その余裕がなかったわけです。

トッテナムは、昨シーズン、新規の選手追加がなく、今シーズンの新契約選手3人のうち、けがで2選手が出遅れた時点で、ポチェティーノの運命は決まっていたのかもしれません。

選手の追加がなかった、以外にも指摘されているものがあります。

ポチェティーノの戦術は、ハイプレスを特徴としており、選手の消耗を強いるものでもあります。その高い要求に対しての信念が選手の中から消えてしまうと、チームが急激な下降線をたどるのは、ドルトムントにおけるクロップの最後のシーズンやポチェティーノが選手だったころのNewell’s Old Boysでも起きた話でもあります。(ポチェティーノは、彼の師匠ともいえるマルセロ ビエルサ(Marcelo Bielsa)が当時監督だったNewel’s Old Boysで選手として活躍しました。1990-1991シーズンで完全優勝をしたものの1992-1993シーズンには、前期最下位沈みチームは崩壊しました。)

ポチェティーノは、ビエルサと比べれば柔軟性のある監督です。それでも、彼の信条であるハイプレスサッカーは、肉体的にも精神的にも選手を消耗させるものであったわけです。その消耗のピークともいえるのが、今シーズン(2019-2020)におけるブライトン戦でした。(3-0で敗北しました)その時出場した11選手のうち9選手が4年以上在籍している選手であり、彼らが疲労を感じたのも当然といえるでしょう。これこそが今シーズンのスパーズのインテンシティの低さの理由でもあります。

数字でもそれは伺えます。

昨シーズンまで、スパーズの敵陣40メーター以内でのボール奪取率はトップ6に入るものでしたが、今シーズンはその数字は15位です。選手のモチベーションという意味でも、他のクラブにいけばより高給をもらえるかもしれない現状を踏まえても、難しい状況であったわけです。

それでもなお、スパーズは財政的にはリーグ中6番目の豊かさを誇り、下位に沈んでいるとはいえ、5位まで1ポイント差しかない状況です。この状況の中でポチェティーノを解任するのは自滅ではないのか?とJonathan Wilsonは語っています。

結果トッテナムは、現在サッカーのやり方を踏襲し、監督を変えることになりました。

ポチェティーノ自身もしばしばスパーズを離れることをほのめかしていた状況をみると、解任は避けがたかったのかもしれません。それでもスパーズは、1250万ポンドもの解約金を「限られた予算で」、「若手を有効に使い」、「大きな成果を挙げて他クラブからも評価の高い」、ポチェティーノに支払い、新しいマネージャーとしてモウリーニョを選択しました。いわずとしれたように、モウリーニョは、所属クラブに対し常に投資を求め続ける監督であり、若手育成にも十分な成果を上げることはありませんでした。

プレースタイルにしてもハイプレスのポチェティーノと守備的なモウリーニョ。疲れ切った選手にとってはありがたい話になるのかもしれませんが、このような180度ともいえる転換はギャンブルともいえます。

サッカーにおけるロジックは、まったくロジカルでないようだと、Jonathan Willsonは締めくくっています。

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