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降格がいよいよ現実味を帯びてきた4月。手遅れとも思えるタイミングでファンに愛されたショーン・ダイチを解任して巻き返しを図ったバーンリー。

実績のある監督を招聘するわけでもなく、U-23のコーチであったマイク・ジャクソンとアカデミー・ディレクターのポール・ジェンキンスという元々クラブにいたコーチに、選手であるベン・ミーがサポートする形で新体制がスタートした。

最下位を独走するノリッジにも破れた状況での監督交代は、一見、敗戦処理のようなスタッフ構成だったが、そこから一挙に巻き返し、とうとう4月末に10月以来の降格圏脱出を成し遂げた。

バーンリーに何が起こったのだろうか?

The Athleticがそのポイントを紹介している。

(1)
戦術的な調整を加えていったが、ショーン・ダイチのときのようなプレゼンスのある監督が厳格に指示していくようなアプローチで調整をすすめるのではなく、集合的アプリーチで、選手の意見を取り取り入れながら行われていった。

(2)
(1)を実施するにあたって、ケガで欠場中のベン・ミーをコーチと選手のつなぎ役にした。

(3)
今まで作り上げた枠組みや構造を大きく変えるのではなく、選手たちに自分たち能力を再認識させるようにした。

(4)
対戦相手のビデオ分析を数時間をかけておこなった。
その成果が、先日のウルブス戦で、昨シーズンに4-0で勝利した時に出場していたマチュィ・ヴィドラが先発に起用し、彼は実際に勝利に大きく貢献した。

(5)
チームセレクションやフォーメーション。試合中のアクションも、ビデオアナリストをはじめ、他のチームスタッフと話し合いながら検討し、最終決定をマイク・ジャクソンが行う形にした。

(6)
いままでより選手に自由度を与えて、我慢強くポゼッションしていきながら、ゲームを支配していく形に変えていった。

(7)
簡単にロングボールでフォワードに当てる形から、短いパスを多用しつつ、ロングパスも絡めてフォワードの足元にボールを集める形にしていった。合わせて、中盤ワイドの選手の位置を前にして、攻撃の枚数を増やした。

(8)
チームでもっともクリエイティブな選手であるドワイト・マクニールの配置を左ワイドから右ワイドに変更したことで、つなぎの役割に加え、中に入っての利き足の左足でのクロスやシュートが今まで以上にできるようになった。

(9)
ジャック・コークをスタメンに復帰させた。コークが持つキャラクターや経験に加えて、中盤の安定性を求めたのと、彼のゲームを読む能力が自分たちのアプローチに必要なものとコーチ陣が考えたから。実際、直近でコークが中盤の真ん中で出場した7試合で14ポイントを獲得している。

(10)
ベグホルストがより生きるようになった。
今までバーンリーのスタイルとベグホルストの強みがうまく連携できておらず、ショーン・ダイチも「彼はチームプレーを「しすぎ」いるので、もっと自分のプレーをするべきだ」と言っていたという。今まで述べたようなチームの調整をしたことで、ベグホルストは、チームプレーと同時に自分も生きるプレーができるようになり、ウェストハム戦では、久しぶりの得点をあげ、チームの攻撃に参加することも多くなった。

(11)
クラブ全体としての一体感を保つため、先日のウェストハム戦では、ジャクソンは、試合後選手たちに指示をして、アウェイスタンドにいるサポーター達に感謝を伝えた。その後のホームゲームでは、選手たちは試合後もピッチに残り、スタジアム全体を回ってサポーターに感謝を伝えてていた。

こうしてみると、改めてプレミアリーグの監督がケアしなければいけない領域の幅広さがわかるが、一方でコアとなるのがメンタル的なところ、モチベーションコントロールにあることも伺える。

「チームを変える」というと、とかく戦術的なことがフォーカスされがちだが、選手が活きる環境作りが最も基本でクリティカルなのかもしれない。

負けが重なるとモチベーションを保つことが難しくなり、いくら戦術や技術的なスキルが高かったとしても、選手のポテンシャルを発揮させることが難しくなってしまい解任せざる得ないのだろう。

実際、公開されたトレーニンググランドでの映像をみると、チームの雰囲気も明るくなっており、選手からも「フットボールが楽しめるようになった」などの声が聞かれるようになった。

ショーン・ダイチはバーンリーの中で、特にファンに愛された監督で、選手達の信頼もあったようで、誰もが「今更変えるのか?」と思った解任劇だったが、選手の意識を変えるためも必要なことであり、結論はまだ早いが、「もうだめだろう」と思われた状況から、大脱出の可能性を感じさせるまでにはなってきた。

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プレミアリーグ 移籍情報

プレミアリーグ 最新順位

順位チーム勝点試合数得点失点得失点差
1マンチェスターC83342653842163
2リバプール82342572862264
3チェルシー66341996682939
4アーセナル633420311534113
5トッテナム6134190411593920
6マンチェスターU553515101054522
7ウェストハム52351571353467
8ウルブス49341541533321
9ブライトン44351014113442-8
10ニューカッスル43351110144056-16
11レスター4233119134854-6
12クリスタル・パレス41349141145423
13アストン・ヴィラ4033124174446-2
14ブレントフォード4034117164149-8
15サウザンプトン4035913134158-17
16バーンリー3434713143146-15
17リーズ3434810163872-34
18エバートン323395193555-20
19ワトフォード223464243269-37
20ノリッジ213456232271-49