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21/22プレミアリーグの降格争いは、最期の1枠と争うバーンリーとリーズの間で得失点差レベルの激しいが、最終節まで続いたが、ショーン・ダイチ監督解任後、怒涛の追い上げを見せたが、結局バーンリーが降格することになった。

降格決定前に公開された記事だが、The Athleticがバーンリーの決算発表に関連して興味深い記事を発表している。

バーンリーは、既報のように2020年12月にALKキャピタルに買収されたが、バーンリーの2021年度の決算が発表された。そこにはいくつかの注目すべき事実が記載されていた。


バーンリー争奪戦に幕。買収先が決定
バーンリーが身売り間近か?2つのグループの争奪戦に。


大きなポイントは、ALKがバーンリーを、レバレッジド・バイアウトで買収し、その買収資金をMSDホールディングスという企業から借金をしていることである。借金の金額は6,500万ポンド(100億円程度)にものぼる。

レバレッジド・バイアウトとは、買収対象(この場合バーンリー)の資産価値(より単純化していえば、バーンリーが持っているお金)を担保に、買収企業(この場合ALK)が借金をして、企業を買収することである。

ALKにお金を貸す側としては、ALKがお金を返せなくなっても、バーンリーの現金を取り立てればよいことになるので、お金を貸しやすくなる。レバレッジド・バイアウトの詳細は割愛するが、要はALKにとっては、大きな出費を伴わずに、自己資金だけでは買収できない規模の企業買収が可能になる(だからレバレッジ(てこ)といわれる)。

この時のバーンリーの買収金額は、1億7,000万ポンドであった。

借金の金額の大きさもそうだが、注目すべきは「借金の返し方」にある。

基本の取り組めでは、借金は2025年12月に返済することになっており、それまでの期間、ALKは金利のみの支払いをすればよいことになっている。

しかし、バーンリーがプレミアリーグから降格した場合、今シーズン終了後まもなく、6,500万ポンドのうち、”かなりの額”を返済しなければいけなくなる。(これ自体は、MSD側にしたらおかしいことはなく、単純にプレミアリーグ降格によって担保の資産価値が下がるため回収を急ぐだけの話である。また返済額が具体的にいくらなのかは現時点では不明である。)

さらにいうと、降格したバーンリーが2023年にプレミアリーグに復帰できなかった場合、借金のまとまった額のさらなる返済の必要がでてくる。

そうなった場合、バーンリーは競争力を保ちつつ、正常にクラブ運営を続けることができるのだろうか?
いくつかの焦点がある。

プレミアリーグから降格したチームが降格後3シーズンに渡って支給されるパラシュートペイメントと呼ばれるお金が、MSDへの返済をした後にどれだけ残るか?

また、パラシュートペイメントがあるにせよ、収入は大きく下がるため。選手の売却が必要になることが予想される。(当然選手やスタッフとの契約条項で、降格した時に彼らのギャラは減額されることになるが。)そうなった場合、当然「売れる」選手でなくてはならない。現時点で想定されるのはイングランド代表GKのニック・ポープ、マクスウェル・コルネ、(今年獲得したばかりだが、)ボウト・ベグホルスト、ドワイト・マクニールぐらいであろうか。これらの選手であれば、中堅以下のクラブであれば、プレミアリーグでも先発できる可能性があるため、それらのクラブにとっては、「お買い得セール」で選手を手に入れられるかもしれない。

実は、バーンリーには、今シーズン限りで契約が切れる選手が9名おり、その中には主力のジェームス・ターコウスキー、ベン・ミー、マチェイ・ヴィドラらの、本来あればある程度の金額で売れたかもしれない選手も含まれている。チームとしてのバーンリーにとって、より重要なのは無償でこれら主力選手が一斉に抜けてしまうことであり、チームの大幅な弱体化がさけられなくなり、それを埋め合わせる資金も売却から得られないことになる。

プレミアリーグ復帰をめざすのであれば、選手が去れば、その穴埋めが必要で、チームを強化するには適切な価格でよい選手を獲得することも重要にある。

実はバーンリーの前オーナーグループは、堅実なクラブ運営で有名で、移籍での選手獲得や選手年俸も低く抑えており、借り入れもしない形でクラブ経営をしており、結果的に銀行口座にある現金も、2019年の4,160万ポンドから2020年の8,060万ポンドと大幅に増やしている。

ところが、ALKが買収してからの2021年7月時点での残高は、5,020万ポンドと大幅に減少している。(ただし、会長のアラン・ペイス[Alan Pace]などALKから来ているクラブの首脳陣はバーンリーから利益を得ていない。)

またバーンリーが借り入れしている金額も1億0,200万ポンドにのぼる。前期の税引前利益も300万ポンドの赤字となり、これも2016年以来のことである。

年間の金利の支払いは650万ポンドという。

収入面でみると、コロナの影響もあり、総収入は、前期の1億3,400万ポンドから1億1,500万ポンドにまで減少している。(ただし2019/20シーズンは、13ヶ月で集計されている)

バーンリーにとって最も重要な収入源であるメディア収入に関しても、1億1,350万ポンドから1億0,390万ポンドに減少している。バーンリーの総売上にしめるメディア収入が占める割合は8割である。(プレミアリーグから降格した今、これらの収入が見込めず、全体の収入に大きな影響がある)

プレミアリーグから分配されるメディア収入分配は、その4分の1は、クラブの順位に応じてなされる。

バーンリーの推移をみると、

2018/19シーズンは7位となり、1億2,150万ポンドを受け取った。2018/19シーズンでは、15位になり1億1,150万ポンドとなったが、これには、ヨーロッパリーグに参加したことによる収入も含まれる。2019/20シーズンは、10位で1億1,350万ポンド、2020/21シーズンは、1億0,390万ポンドとなっている。(一昨シーズンと昨シーズンに関しては、コロナで中断された影響もありメディア収入は全体として減少している。)

Match-day収入(基本的には試合のチケット収入)は、460万ポンドから35,500ポンドに、飲食の売上が210万ポンドから115,000ポンドに大幅に減少している。(これらはコロナの影響が大きい)

Retail sales(主にグッズ販売)は、180万ポンドから160万ポンドに減少している。一方で、実は2018/19シーズンも180万ポンドであり、人口7万人程度のバーンリーで考えると、以外と世界でバーンリーのグッズを求めるニーズも一定数有ることが伺える。

支出面で大きいのは、選手年俸であるが、これはプレミアリーグにいる過去6年間で増え続けていた。

2016年時点で、6,100万ポンドであったが、2019/20シーズン(12ヶ月換算)で、9,400万ポンドで過去最高となったが、昨シーズンは2016年以来の減少に転じ、8,600万ポンドとなった。これらの支出増には、リクルート部門やアカデミー充実のための費用増も含まれる。

収入減もあり、売上に占める選手費用の割合が、70%から75%に増加しているが、これらはバーンリーがプレミアリーグに残留した場合には、大きな問題にならないと思われている。

結局、プレミアリーグに残留するか降格するかが今後のバーンリーの将来に、大きな影響を与えることになる。財政的に健全であれば、降格後もフラムのようにチームを強くたもったまま、1年で再昇格を実現することも可能で、そうなればバーンリーも致命的な問題にいたることはないだろう。

フラムになるのか?それとも2年連続での降格となりリーグ1にまで落ち、そこから上がってこれなくなったサンダーランドになるのか?

バーンリーを買収したペース会長は、ALKの買収は持続可能な形で進んでおり、降格への備えもしているという。

彼らのいう備えが試されるタイミングが、希望よりも早く訪れてしまったことは間違いない。

プレミアリーグ 移籍情報

プレミアリーグ 最新順位

順位チーム勝点試合数得点失点得失点差
1マンチェスターC83342653842163
2リバプール82342572862264
3チェルシー66341996682939
4アーセナル633420311534113
5トッテナム6134190411593920
6マンチェスターU553515101054522
7ウェストハム52351571353467
8ウルブス49341541533321
9ブライトン44351014113442-8
10ニューカッスル43351110144056-16
11レスター4233119134854-6
12クリスタル・パレス41349141145423
13アストン・ヴィラ4033124174446-2
14ブレントフォード4034117164149-8
15サウザンプトン4035913134158-17
16バーンリー3434713143146-15
17リーズ3434810163872-34
18エバートン323395193555-20
19ワトフォード223464243269-37
20ノリッジ213456232271-49